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flower vase

glass, brass

2019

我々は、フラットな空間に置かれた質量のある何かを、その周囲にある背景をと定義し、それらの分化によって対象のカテゴライズを殆ど無意識のうちに行なっている。ある物体Aを「Aである」と知覚する瞬間にも脳内では膨大な量の情報の照合作業が行われ、個々の主観に基づいた最適解をはじき出す。この図と地の関係が逆転するとき、それまでは見えなかった地が俄かに意識の上に立ち現れ、我々の認知はアップデートされる。一見すると意味のない形のガラスの寄せ集めにすぎないが、視点を入れ替えることで背景に花瓶の輪郭が浮かび上がる作品。

 

「共通の境界線を持つ2つの領域があり、一方を図、他方を地として見るとする。その結果、直接的知覚的経験は両領域の共通の境界線から生じ、1つの領域のみか、一方が他方よりも強く作用する行動形成効果に特徴付けられる。」

 

エドガー・ルビンは著書『視覚的図形』の中でこのように論理を展開したが、これは我々がある物質を認知する際のごく自然な道筋を、二つの杯の図を例に取りわかりやすく示したものである。このルビンの杯を三次元的な立体(花器)に置き換えることで物の形体の捉え方を再提示する。

 

制作・撮影:高本夏実

Manufacturing Techniques: Kilnwork, Metal turning